広間は一瞬にして、地獄絵図に変わった。
舞踏会に参加していた女性達は逃げるに逃げられず、壁に背を付け相方を不安そうな面持ちで見守っている。
窓から見える夜の空は、紫色の雲を重ねていく。
真夜中は過ぎた筈なのに、外は暗さを増していくばかり。
今宵一番の悪夢が、舞踏会会場である広間で起こっていた。
「ロイ、君は一体何がしたいんだい?」
鉄の臭いと金属が擦れる音、叫び声が充満する中、ロイに白刃を向けたグランド公が口を開いた。
彼の白刃を弾き返し、ロイは更に攻撃を入れる。
「僕はただ、イヴを助けたい。それだけです」