ミスター金は自分のコーナーに戻ると椅子にどかっと座った。
アフロヘヤーも汗で濡れてグチャグチャになっていた。
山尾が、出したスポーツドリンクをグイグイ飲んだ。
「スタミナ切れてるな。大丈夫かな?」
高橋君がぼそりと言う。
ミット打ちを繰り返しながら高橋君は試合を観ていたのだ。
確かにミスター金はスタミナ切れてると思えた。
そりゃ当たり前だ。
四十二歳が、真剣勝負に出る事だけでもすごいのに一ラウンドフルに中山を攻め続けたのだ。
山尾から何かアドバイスを貰っていたが、アップになったミスター金の顔は目が虚ろで相当疲れてるようだった。
この試合は当然テレビ中継される為に総合格闘家の高坂人志が、解説に来ていたが、的確な解説をしていた。
「ミスター金選手疲れてますね。一ラウンドあれだけ動けば疲れますよ。
ニラウンド以降どう戦うのか興味がありますが、中山選手の有利になるでしょうね。」