私達は、試合前にリングのチェックを行って驚いた。
プロレス用のリングではないのだ。
格闘技用のリングになっていた。
マットは堅くて下にスプリングも入ってなかった。
「こりゃ、俺達よりもプロレスをやる連中大変だな。」
山尾が、ぼそりと言うとボボさんも暗い声でそうですねえと呟いた。
あまりの暗さについボボさんを忘れがちになるがボボさんは玉田の肩を軽く叩いていた。
玉田はプロレスをする為に受け身を取らないといけないが、この堅いマットは大変だろうと思われた。
「皆がセメントでやるんだからこの位は大丈夫ですよ。」
玉田は明るく言った。
どこかに、皆が真剣勝負なのに自分自身は、結末の決まっているプロレスをする事に負い目があるようだった。