あのキス現場を目撃して、一ヶ月半が過ぎた。
沙紀を好きだと気づいて、その日から沙紀ばかりを見て過ごしていた。

もう辺りは梅雨気配を感じさせるほど、湿っぽい。
この前の春の陽気が嘘のようだ。
空はほぼ毎日暗く、ぱっとしない。
たまに太陽が顔を出すが、照れているのか、臆病なのか分からないがすぐに顔を隠してしまう。

そんな空を、窓から眺めていた。



「次は、斉藤!」



先生が短冊のような紙を生徒たちに配っている。俺の名前が呼ばれ、俺は席を立ち上がり、先生の方に歩いていく。



目の前にきたときに、わざと見えるように大きな口を開けて欠伸をしてみた。
忠告だよ、授業がヒマすぎるんだよ。



「…お前どうかしたのか?」



先生は俺を見つめて、心配したような顔を見せる。
欠伸をしたのがいけなかったのか?



「はい?なにが?」



「これ、見てみろ」



こう言って短冊の紙を差し出した先生。
この紙には大事なことが書かれている。
それは、成績表。