俺は部活に行こうと思い、屋上から姿を消した。不気味なくらい静かな学校。
オレンジ色に染まる廊下が幻想的に見えた。
まるで果物のオレンジの中にいるような感覚。
次第に怒りの感情が和らいでいく。
教室の時計を見ると5時過ぎを示していた。
俺は荷物を取り、体育館へと向かう。
…どうして、月は教えてくれなかったの?
そうやって無視して俺を悲しませるんだね。
突然現れたある人の姿。
目の前を走っていく、沙紀だ。
あの可愛いエプロンを身につけて、俺の存在に気づいていないかのように、足早に走っていく。
なんで気づいてくれないの?
俺のこと気づいてよ。
「沙紀!!」
名前を呼んだら気づいてもらえるかもしれないと思い、名前を呼んでみるが、沙紀はそのまま走って行ってしまった。
やはり気づいてくれなかったか。
なぜあんなにも足早に走っていたのだろう?
しかも沙紀の表情はとても嬉しそうだった。
なぜ?
気になった俺は沙紀の向かった場所へ足を進める。
行かなきゃ良かったと後悔しても、もう遅かった。