もし「好きだ」と言っていたら面と向かって戦えることはできたかな?
俺は司の腕を離し、司を突き飛ばした。
お前の顔なんか見たくない。
沙紀がお前に向ける笑顔が脳裏にちらつくから。
余計腹が立つ。
司はバランスを崩し、その場に尻餅をついた。
「人が誰を想おうかなんてお前に関係ねぇだろ。お前は小さい人間だな。」
「…図星かよ?」
下を向いて司は笑いながら言った。
その言葉に否定出来ない自分だけど、偽りの言葉を並べる。
「…もし図星だとしたら司はどうするんだよ?俺を殴って、この学校から追い出すつもりか?
でももし…」
言葉を詰まらせる俺。
沙紀を好きになってしまったことは謝るよ。
けど好きになってしまったのだから仕方ないだろ?
好きになる時間なんて浅くても深くても本物なのだから。
司に阻止される理由などどこにも転がっていない。
「お前はなにが言いたいんだ?」
そんな目付きで見るな。
親父が俺を見るような目付きと似ている。