なんでこんなにも温かいのだろう。
沙紀の言葉が嘘なら、このカップケーキはいつ作ったものなのかな?


ひょっとして、今日の朝かもしれない。


俺は一口、ケーキを口に含む。
含んだ瞬間、甘い匂いと、甘い味が口の中に広がった。


「うま…」



初めて食べたかもしれない。
こんなにも美味しいケーキ。
有名なパティシエが作ったケーキより、高級な果物を使ったケーキより、ずっとずっと美味しい。


これを食べた時、思ったんだ。


ずっと食べ続けたいって。
甘いモノが嫌いな俺が初めて思った。
沙紀が作ったケーキやクッキーなら食べられる。

何でかな?
自分でも分からないけど、この甘さが丁度いい。


俺のために作ってくれたかもしれないケーキを、ほんの一瞬で食べてしまった。


また、作ってくれる?



空を眺めて、微笑む俺。


もう桜は散ってしまったけど、俺の中はようやく蕾になったばかり…。