やっぱりダメか。
言うのが遅すぎたのかな?
あの時拒まずに、要らないかもしれないけど買ってもらえば良かった。
「…やっぱり、無理か?」
「なぜ今頃言うのですか?歩さん、前に要らないと言ったでしょう?なのに今更、なぜですか?」
記憶力いいな、富田。
去年のことを今でも憶えてているなんて。
俺は視線を下に落とし、軽く唇を噛んだ。
だって、俺は近づきたいんだよ…。
「…変わりたいんだ。
俺はまだ変われるはずだから…」
こう言ったあと、真っ直ぐ、富田を見つめる。
この時の俺は迷いなどなかったはずだ。
だからこの俺を見たあとに、条件を出したのだ。
「歩さんの中でなにか変化があったんですね。分かりました。」
富田は小さく笑って、近くに置いてあった手帳を開く。
そしてボールペンを持ちながら、予定を確認していく。
「明日、最新型の携帯を買ってきます。携帯会社は僕と同じ会社でいいですよね?色の希望はありますか?」
順序よく事が進んでいく。
その流れに少しだけ抵抗を感じた。