でも今はそう思わないよ。
そう思ったのは過去の話。
今はこの世界で生きたいと思っている。


それは─…。



「…意味が分からないんですけど…」



これが素直な意見。
告白は今まで何回もされてきたが、これほど意味の分からない告白は初めてだ。
別に言葉の意味が分からないとかじゃなくて、明日香自体が分からない。


だからこれしか言える言葉がなかった。



「言っておきたかっただけだよ。あんまり深く考えないで?じゃあ私、帰るね。また明日ね」



動揺など見せずに平然と俺の言葉を交わす明日香。
動揺しているのは俺の方か。


俺に後ろ姿を見せて去っていく明日香。
ワケが分からなさすぎて、俺はついつい笑ってしまった。



「意味わかんねぇ…」



頭を掻いて、俺は教室にカバンを取りに行った。
隼人はもう部活に出掛けたのだろう。
カバンが席になかったから。



帰ろうと思い、教室から離れていく。
その時、甘い香りが漂ってきた。
この香りはお菓子?


あぁ、そっか。
この廊下の先には調理室があるから。





俺は甘いものが嫌い。
特にケーキとチョコレート。
けどどうしてかな?
あのカップケーキの味が忘れられないんだ。