その理由は、親父が有名な弁護士であるということ。
そしてこの学校にいろいろと協力しているから。
だから先生たちは俺になにも注意しない。
髪色のことさえ、注意しない。
いいこともあるけど、
親父の権力だと思うと、嬉しくなくなる。
結局俺は親父の操り人形ということだ。
「そうか。次からは出るように。水島は体調大丈夫か?」
ほらな、なにも言わない。
言えるわけないもんな。
だから話し合わせろよ、沙紀。
沙紀の背中を見つめて、こう訴える俺。
ややこしくするな。
「…あ、はい大丈夫です…」
俺の嘘に騙される担任。俺の嘘に助けられた沙紀。
結果はプラスマイナスゼロか。
担任が俺たちに明日のことを話していく。
俺はその話を聞いていなかった。
ずっと沙紀の背中を見つめていたんだ。
やっぱり、熱いよ。
体が熱すぎる。
「じゃあこれで終わり!」
全てを話し終えたのか、担任は笑顔を見せて爽やかに教室から去って行った。
「ねぇ、歩くん?
さっきのことなんだけど」
すると隣の席の明日香が、笑みを浮かべて俺に話しかけてきた。
その笑顔の意味はなんだろう?
「なに?」
「先生に言ったこと、嘘でしょ?」
時が止まった気がした。