最低って言っても構わないよ。
そんなこと、自分がよく理解しているから。



いつの間にか、沙紀が俺の前に立っていた。
俺が邪魔で教室に入れないよう。

わざとだよ?
わざと入れないようにしているに決まっているじゃん。

どんな反応するか見たいだけだよ?



「…どいてよ…」


なに?聞こえないよ。
顔見て言ってごらんよ。


「は?聞こえねー」



沙紀を見下ろして笑う俺。
隣にいた沙紀の友達が、困った表情を見せている。


この女の名前ってなんだっけ?



「あのさ、君なんて言う名前なの?」



沙紀は俺の言葉に無視をして、ずっと下を向いたままだった。
あとでたっぷりいじめることにするよ。

俺は隣の子に視線を移して、名前を聞く。
するとその子は頬をピンク色に染めて、笑顔でこう返してきた。



「私、塚本明日香(つかもと あすか)って言うの!歩くんと隣の席なんだよ!」



そういえばそんなような名前、俺の隣にあったな。
この子だったんだ…。