『未来』へ。
俺たちは進むことをやめない。
歩くのだ、『未来』に向かって…。
まだ夏の暑さが残る日。俺は沙紀とある場所へと来ていた。
手には沢山の百合の花を持って。
今日の空色は蒼。
卒業式の日と何も変わらない空の色。
「優…」
心地よい風が吹く。
色の抜けた髪の毛が、揺れる、揺れる。
金色の髪が向日葵を連想させる。
俺はある場所で止まり、その場所の前でしゃがみこむ人の背中に言葉を投げかけた。
「歩?来てくれたんだな…」
彼は俺たちに気づき後ろ振り返る。
変わらない笑顔。
彼にはまだ笑顔が咲いている。
「当たり前だろ?今日は小林がいなくなって一年だからな…」
そう、今日は8月27日。
去年の今日、小林はこの世界から消えたのだ。
あれから一年。
長いと感じる一年もあっという間に過ぎていった。
別々の道に進む俺たちは、この日だけは絶対に忘れたりしない。