「嘘、うそ!早く行けって」



嘘じゃないと怒るよ?
俺はほっとし、浮き輪を持つ。
良かった、膨らましてきて。
今から膨らますことになると面倒だから。



「鈴木くん、泳がないの?」



「俺はまだいいや。荷物見てる。早く行けよ」



小さく微笑む優。
きっと一人になって思い出したいのだろう。
え?誰のことをって?


そんなの決まっているよ。
海の向こうにいる、愛する人のことだ。



「じゃ、沙紀行くぞ~」


「わーい!!」



俺と沙紀は浜辺を走っていく。
浜辺は想像以上に熱かった。
けれど気にするか。
海に入ったら気持ちよくなるさ。




海全体に広がる声。
思い思いの時間を過ごす、人たち。



俺と沙紀は二人で浮き輪に入り、プカプカと浮かぶ。
この波の揺れ具合がちょうどいい。


密着をする体と体。
緊張するのは俺だけかな?



「ねぇ、歩?百合もいれば良かったね。そしたら鈴木くんも嬉しかったんじゃないかな。」