「何だよ?」
「なぁ夏休み、気晴らしに海行かね?」
俺は旅行雑誌を片手に、優の反応を見る。
行き場所はだいたい決まっている。
優は理解できないのか、俺の持つ観光雑誌を覗き、再び俺の顔を見た。
「そんなに毎日勉強とバイトじゃつまんねぇだろ?」
にこっと笑い、期待を膨らませる。
優なら賛成してくれるよな?
「そんなこともねぇよ」
優は頭を掻きながらこう言った。
俺ががっくりと肩を落とす。
ちょっと、ちょっと。
想像していたのと違いますけど?
優の心の中にはあることが隠されていた。
それを聞かされたのは、沈む夕日を見ながらだったよな…。
「…まぁとにかく!行くんだよ!!」
行かなきゃ意味ねぇだろ?
最近、新車を買ったんだから。
優と沙紀と海に行くために富田にねだって買ってもらった車。
早くそいつにお前たちを乗せて走らせたかった。
「誰と?」
優はまだ乗る気ではないようだ。
誰とって…そんな質問するなよ。
優なら分かるだろ?