思っていないことを口にして、あとで後悔をして。
沙紀を好きだと気付いたときも、沙紀は俺のことなんで信用してくれなかった。


この性格が問題なのだ。


静かな空間に、聞こえてくる沙紀の泣く声。
司と会っていたときの沙紀は本当に幸せそうだった。
けど今の沙紀は不幸せそう。

その原因は俺しか考えられない。



「…したかったわよ。」


ゆっくりと顔を上げて、俺を鋭い目付きで睨み付ける沙紀。
さっきまで泣いていたのに、あの涙はどこへ消えたの?と疑いたくなるくらいだ。


目付きが怖い。


恨みを持つような…
俺は沙紀に恨みを持たれたのだ。


「は…」



失う言葉。
沙紀の視線が俺から言葉を吸いとっていく。


なにも考えられない。


「したいって思うのは当たり前でしょ?大好きなんだもん!!誰もが大好きな人とキスしたいって思うでしょ!?あんたにはそういう感情ないわけ?」




もう、分からない。
沙紀の言葉が俺の体を支配する。
頭で考えられなくなる。


誰か、助けて。





俺は最低な人間。



気付いたとき、やっぱり後悔をするんだ。