だからあの日、俺に全てを話してくれたんだろ?
俺はお前の力になりたかった。
だから大きく背中を押したんだ。
お前にとってそれは小さなことかもしれない。
けど少しだけ、お前の勇気へと繋がったと信じたい。
「歩、今から時間あるか?」
こう優から言われたのは本当に突然だった。
小林と屋上で話をしてから少し日にちが経ったとき。
俺を誘う優の瞳の奥に輝くものが見えたのだ。
それは答えという名の光。
だから俺は断ることなどしなかった。
優の答えが聞きたい。
優が出した答えを受け入れると言ったのだから。
俺は沙紀に事情を説明をし、一人で帰ってもらうことにした。
やはり沙紀は残念そうな顔をしたけど、『大丈夫』だと笑顔を見せてくれた。
俺は優が案内する場所まで向かう。
二人の間には会話という会話はなかった。
「次、右」「次、左」
このような言葉しか二人にはなかった。
無駄な会話をしても意味がない。
きっと優は怖いのだろう。