苦しくない恋なんてないんだよ。
猫や犬や虫や花だって苦しい思いをしているんだ。
人間だけじゃない。
恋が簡単なモノだって誰が決めた?
恋は難しいんだよ。
小林はよく知ってるだろう?
「でも…優くんには広瀬さんが…」
小林の顔が涙でびしょ濡れになっていく。
そこだけ小雨が降っているかのよう。
涙は汚いものを洗い流してくれるんだ。
だから小林は生まれ変わったんだよ。
新しい自分に。
俺は頭を掻いて空を見上げた。
「優には広瀬がいる。広瀬は俺の友達だ。でも小林も俺の友達。どっちの肩も持てないけど、俺は二人の幸せを願ってる」
誰よりも。
だから優が小林を選ぼうが、広瀬を選ぼうが、俺は二人の友達だ。
縁を切るなんて出来るはずがない。
「あたし…伝えてもいいの?」
「ばーか。伝えなきゃ前に進めねぇって!答えを出すのは優だ。小林はその答えを受け入れろ」
俺も受け入れる。
優は今迷っているはずだから。