なぜ持っているのだろう?
二人は別れている。
そんな思い出の品を持っているなんて…。
ああ、そっか。
そういうことか。


だから小林は言ったんだね。
『優が好きだ』と。


好きだから持っていたくなる。
小林は素直だ。



「これって優とのだよな?…小林は優を忘れていないんだな」



小林の瞳を見つめて、言葉を並べていく。
俺は小林の涙を拭くことは出来ない。
それは俺の役目ではないから。



「忘れられない…。身体中にまだあるの。優くんの熱が…。でも無理だよね…」



ぎゅっと指輪を握りしめる小林。
なぜ無理だと諦めるの?
無理じゃないかもしれない。
なぜ諦めるんだよ。



「まだわかんねぇよ。俺は何て言ったらいいか迷うけど。苦しいなら伝えろよ」




このまま自分の中に本当の気持ちを閉じ込めたままでいいのかよ。
また苦しいって破裂するかもしれない。


その時はもう遅かったら意味ないじゃないか。


苦しいなら伝えろ。