小林の気持ちを聞いたとき、俺はしばらく何も考えられなかった。
突然何を言い出すのかと思えば…
嘘か本当かも分からないような発言だった。
けど嘘ではないはずだ。なぜならば小林の瞳からゆっくりと一粒の涙が零れたから。
「小林…ちょ…待って!!」
慌てて小林を宥める俺。でも涙の速さは加速する一方。
まだ教室には生徒たちがいる。
今の状況を見られてしまったら俺が泣かせたと思われる。
だから俺は小林の腕を掴み、教室から飛び出た。
「ちょっと来て?」
細い腕。
そこから伝わる温かさ。小林が生きているという証だ。
「斉藤く…ん…」
泣くなよ、何で泣いてるんだよ。
そんなにも苦しい?
優が好きすぎて苦しいの?
俺は気持ちが楽になりそうな、ある場所へと向かった。
ドアを開けると身体中に寒気が走るような錆びた音がする。
我慢をして、ドアの向こう側の世界へと足を踏み入れた。