それって一緒に帰れないということ?
残念な顔を見せると沙紀は『ごめんね』と謝ってきた。



「…しょうがないなぁ…。今日は何作るの?」



はぁ…とため息をついて、椅子に座る。
沙紀を見上げ、今日のメニューを聞いた。



「今日はいちごのロールケーキ!今度歩に作ってあげるね!」



その笑顔で許してあげるよ。
沙紀が好きだからだよ。こんな彼氏、どこにもいないよ。



「上手く作れよ?行ってらっしゃい!」



こう言って、沙紀の頭を撫でて見送った。
教室には優の姿はない。広瀬と帰ったのかな。
けど俺の予想は外れ。
優は一人である場所に向かっていた。
そこから見る夜空は最高なんだ。



運命が傾いていく。


もう目の前まで近づいていた。




「…斉藤くん…」



突然後ろから可愛らしい声が聞こえてきた。
俺は声が聞こえた方へ顔を向ける。



そこには今にも泣きそうな小林が立っていた。




「…小林?どうかした?」



小林と話すのはいつぶりだろうか。
小林もこの時苦しんでいたのだ。
誰かに吐き出したくて、だから俺に吐き出したのかもしれない。


運命が変わる一日前の出来事。




「…私ね、まだ好きなの。優くんが…」





絡まる恋心。
この恋の結末は誰も知らない。