俺は小さい人間だからお前と真正面からぶつかることができなくて、本当に欲しいものを横取りする勇気なんかなかった。

けど俺がしたことは、もう横取りしているようなもんだった。


止められない感情。
誰も助けてくれない。

知っているさ。
人間は誰でも一人なのだから。



「…ずっと夢みてたのに…」



小さな声でこう呟く沙紀。
まるで泣いているような、苦しそうな声。


まさか泣いているなんて思わない俺は、ちらっと沙紀を見ると瞳から涙が零れていた。

本当に泣いていたなんて…


涙を見た瞬間罪悪感が襲う。


涙が太陽の光によって反射をし、きらりと光。


俺、悪いことしたかも…

邪魔なんかするつもりはなかったけど、先に言葉が出ちゃったから、取り返しなんて出来なかった。



「は…なに泣いてんだよ。そんなにキスしたかったのかよ。」



バカな自分。
素直に謝ればいいのに、俺の口から飛び出した言葉は最低な言葉だった。

いつもそう。
なんでこんなに空回りをするのだろう。