平行に保たれていた天秤は何かがきっかけとなり、どちらかに傾く。
それは本当に些細なこと。


優の中の天秤は、どちらかに傾いていったんだ。



…校内に響いていくチャイムの音。
それと同時に慌てて座りだす生徒たち。
俺も体を前に向けて先生が来るのを待つ。


けど優が気になる。
なぜならば優の隣は小林だから。


息詰まるのではないかと不安になる。



一年生のときと変わらない気がした。
後ろが優でその隣が小林で。


四人で撮ったプリクラが頭の中に浮かぶ。


仲が良かった俺たちの間に出来た溝は、もう埋めることが出来ないのかな?


バラバラになった俺たち。


俺は何を望むだろうか。


ごめん…答えがない気がする。



「なぁ…沙紀は?」



突然優が俺の肩に触れ、こう聞いてきた。
この時、優の手が若干震えていたんだ。


限界を迎え、助けを求めているような…。



教室には沙紀の姿がない。
そして沙紀からの連絡もない。