「嬉しいよ、普通に…」
こう言って、視線を足下に落とす優。
俺は優が見せた一瞬の不安な表情を見逃すことはなかった。
きっと心の中にいる本当の自分が現れたのだろう。
今にも泣きそうな表情をしていた。
力不足でごめんな。
「…まぁ、優はさ、普通にしてればいいんじゃねぇの?」
きっと小林のことで苦しんでいるんだろ、優。
だって一年生のときと何も変わらないもんな。
変わったといえば、外形と時代だけ。
心は何も変わっていない。
「おう…頑張るよ」
この時の優の言葉が今までの中で一番弱々しかった。
今でも忘れていない。
まるで小林をもう一度愛そうとしているような…そんな意味の『頑張ろう』に聞こえたんだ。
優と広瀬。
優と小林。
優は一生懸命、自分で答えを見つけ出そうとしていた、三年生の始まりだった…。