一緒にいて当たり前か。
だってお前は司の《彼女》だから。



もう一つの影の正体は、水島沙紀だった。

司は沙紀の頭を撫でて、微笑んでいる。
それに対応するかのように、沙紀は司の手をぎゅっと握りしめた。


どうしてだろう?
二人から目を反らせることができない俺がいた。

あんなのほっとけば早い話なのに。


だんだんと苛々してきた。


ムカつく。
ムカつく。



一回視線を前へとずらし、もう一度視線を二人へと移すと、そこは目を疑うような光景になっていた。



司が沙紀へと近づき、
瞼をゆっくり閉じていく。



まさか?
そんなわけないよな?


だってここ、公共の場だぜ?



時間がゆっくりと進んでいく。
誰かがスローボタンを押したように。


司と沙紀の距離があと数センチのとき、俺の怒りが爆発した。



「なにやってんだよ、こんなとこで。」




冷たい空気が俺を現実の世界へと引き戻した。