誘ってきたのは珍しい人。
けれど予定のなかった俺には有難い来客だ。
歯ブラシを外し、口を濯ぐ。
水を洗面器に吐き出して、濡れた口元をタオルで拭いた。
「今日昼から友達が来る。予定はそれだけ!以上!」
こう言って、富田の肩をぽんぽんと叩き、洗面所から出て行った。
そして安里のメールに送信をする。
《安里が誘ってくるなんて珍しい~!昼から俺の家に来いよ!待ってるからさ!》
メールを送り、パタンと携帯を閉じる。
そして笑顔を溢すのだ。
「昼までまだ時間あるしゆっくりしよーっと」
部屋までスキップで向かっていく。
体が揺れる度、俺から花が舞い散っていただろう。
それくらい嬉しかったんだ。
優は広瀬のことを愛していたか?
そう聞きたくても、怖じ気付いて聞けやしなかった。
俺は安里に言われて気付いたんだ。
修学旅行のときに撮った記念写真の中にいる優が偽りの姿だと…。