揺れる砂。
ビンの中に入っている星の砂。
俺の手の中に収まる、魔法の小瓶。
これは星の砂。
修学旅行での思い出の品だ。
広瀬が欲しがっていた星の砂は無事に見つかった。
この星の砂に何を願っただろう。
俺はみんなの幸せを願った。
叶うかは分からないけれど、叶うと信じている。
修学旅行から帰ってきてずいぶんと時が過ぎた。
季節は変わり、目の前にはもう冬がきている。
まだひどい寒さはない。
けれどマフラーがないと肌寒い。
文化祭も終わり、あとは冬休みが来るのを待つだけという頃、運命が少しだけ動き始めていた…。
「歩さん、今日のご予定は?」
歯を磨いているときに、後ろから富田が話しかけてきた。
今日は休日。
予定は特にナシ。
沙紀は広瀬と遊びに行くんだってさ。
俺を置いて遊びに行くなんて、ちょっと寂しいよ。
けど仕方がないことだ。
「予定は…」
特に用事などないのに予定なんか聞かないでくれよ。
惨めになるじゃないか。