優の今の心境が気になって、俺はこの日の放課後、一緒に帰ろうと優を誘った。
この日、たまたま沙紀が部活だったため、一人で帰らなくてはいけなかったからだ。
一人で帰るのは嫌だ。
なんとなく、嫌。
変なことを考えそうだから。
「優~、今からヒマ?」
俺は帰る支度を終え、優の方を振り返る。
そして優を誘ったのだ。
「お~、バイトないしヒマ~」
優の返事はマル。
ホッと肩を撫で下ろす俺。
そして笑顔で誘い出す。
「今日沙紀が部活だから一緒にに帰ろうぜ」
優と帰るのはいつぶりだろう。
過去を辿っても思い出せない。
それくらい月日が経っているということかな。
肩を並べて歩くのは久しぶり。
ちらっと優を見上げると、夕日を見る横顔がとても切なそうだった…。
『ナナには壁がある』
沙紀の言葉が静かに胸に突き刺さったままだ。
抜けない、抜こうとしない。
そうかもしれない、
そうだと信じたくない。
優はどっちだと思う?