好きすぎるよ。
これからも大切にする。


「歩って時々寂しがりやになるよね」



「うるさいよ?」



昔、人の温かさなんてすぐに消えてしまうと思っていた。
でも今はそうは思わない。
だって沙紀が温もりをくれるから。
だから消えないで。



「…あのね、歩。ちょっと話いいかな?」



沙紀は見ていた調理本をぱたんと閉じて、俺の腕をぎゅっと握った。



「別れ話は聞かないよ?」



「そんな話じゃないわよ、いいから座って?」



沙紀は俺に椅子に座れと指示をした。
それに従う俺。


「何だよ?」



夕日が無くなっていく。この街から姿を消そうとしていた。
自分の存在を誰にも気付いてもらえなかったように、静かに、ゆっくりと、悲しそうに…。




「ナナのことなんだけど…歩気付いてた?あの子の手首のこと」



広瀬?
手首?



なんのこと?