俺はきっと真似など出来ない。
安里は大人すぎだ。
でももう少し子供らしさも必要だと思うよ。
無邪気さは人を元気に見せるから。
「このまま付き合っても小林も俺も辛いだけだから。喧嘩して別れたんじゃないから安心してな?」
俺を安心させるように優しい笑顔をする安里。
その笑顔がどこか優に似ていた。
自分の気持ちを押し殺し、相手の幸せを望む安里。
優もそうだった。
だから似ていると思ったのだろうか。
「…でも安里はまだ…」
「うん、まだ俺は小林が好きだよ。けどこれ以上、小林の苦しむ表情は見たくない…」
夕日の光がが廊下に差し込んでくる。
オレンジ色が安里を包み込む。
安里の瞳が潤んでいた。
瞳に浮かぶ俺がゆらゆら揺れる。
俺はなにをすればいい?
『大丈夫だよ』と励ませばいいの?
『好きなら好きだと言いに行けよ』と背中を押せばいいの?
些細なプレゼント。
俺は安里にこの言葉を贈った。
「人の幸せを望める人間は、人を必ず幸せに出来る。だから安里は次に出逢った人を幸せにしろよ?」