異変に気づく俺。
ここで無意味な言葉を並べない方がいいな。
理由をまず聞こう。
「ちょっと廊下に来て欲しい。ここじゃちょっと…」
無理矢理笑顔を作り、廊下を指差して俺を連れ出す安里。
それに応えて黙って教室を出る。
「あ!沙紀!ちょっと待ってて!」
教室にいる沙紀に伝え、再び安里の後をついていく。
静かな廊下。
放課後のせいか、あまり廊下には人がいなかった。
皆もう帰ったのだろう。
「で?どうした?」
壁に持たれ掛かり、安里の話を聞こうとする。
しばらく安里は下を向いて言葉をひとつも漏らさなかった。
そして顔を上げて唇を動かしていく。
「俺…別れたよ。小林と…」
がしゃん…。
誰かが皿を割ったのかな?
そんな音が心の中に響いた。
ああ、そうか。
この音は俺の心が砕けた音だ。
何て言った?
冗談だろ?
「へ…なんで…」
安里が出した答えはとても男らしく、そして大人な答えだった。