次第に苦しくなる。
酸素不足か?
そんな訳ない。
花火の明かりが二人の姿を灯す。
どうしてお前たちが?
何で一緒にいるんだよ。
もしかしてやり直したとか?
そんなの俺、聞いてないよ。
けどそれは絶対ないと確信をした。
なぜならば、二人の距離が離れているから。
恋人同士なら暑くても寄り添って見るだろう。
けど二人は違った。
なぁ、どうして向き合おうとしないんだよ…。
二人の姿。
それは悲しさを訴えているようだった。
優と小林。
二人の距離は遠い。
俺は歩くのを止めて、二人をじっと見つめる。
上手くいきますように…と願いながら。
けど、二人は不器用だった。
この時も自分の気持ちを押し殺して、我慢をしていたんだ。
次々打ち上がる花火。
夜空に浮かぶ、蝶々。
すると小林は立ち上がり、優から去っていく。
「…追いかけろよ、優…」
頼むから、追いかけてくれよ。
小林はそれを望んでいるかもしれないぞ?
…でも俺の気持ちは優には届かなかった。
…ドーン。
打ち上がったのは、赤いハートの花火。
けれどその花火はすぐに消えていった。
儚く散る、ハート。
儚く終わりを告げた、二人の恋。
俺はそれを間近で見ていたんだ。
この日、夜空に咲く花火の下で、二人の距離は離れていった…。
優、俺は信じている。
優が再び小林の手を握るときを。
でも、このときも優の中にある蕾が膨れ始めていた…。