俺と沙紀は花火会場から少し離れた場所から見ることにした。
夕日は完全に沈み、空に浮かぶのは三日月だけ。
笑っているの?
それとも無理して笑っているの?
俺たちが選んだ場所は、見上げれば花火を真正面から見ることが出来る、特別な場所だ。
こんないい場所があるとは思わなかった。
見つけた自分たちを褒めてあげたい。
薄暗さが、恋人たちにいい雰囲気を与える。
「ここに座りな?」
手で地面を祓い、沙紀を座らせる。
『ありがとう』と言った沙紀の表情が色っぽく見えた。
いつの間に、沙紀は女になっていたのだろう。
元々女なのだけど、大人の女に近づいた感じだ。
色っぽい。
浴衣のせいかな。
理性がぶっ飛びそうだ。
「あ、何か…いる?俺買ってくるよ。喉乾いたし!」
「そうだなぁ…。じゃあリンゴ飴!」
そう言った沙紀。
無邪気な彼女にまた惚れる俺。
「分かった。じゃあ買ってくるから待っててな!」