着て良かった。
これも富田のおかげだよな。
やばいよ、俺。
月日が経っても、一緒にいる時間が長くても、沙紀を飽きたりしない。
逆にどんどん好きになっている。




「沙紀、お前も可愛いよ。行こっか。」



周りから見たらラブラブなカップルにしか見えないだろう。
それがいいんだよ、それが。



沙紀と手を繋ぐ。
その瞬間、嬉しそうな笑顔を向けた沙紀。
俺はそれを見たとき『幸せだ』と思った。




優は、この日、幸せだと思った瞬間はありましたか…?



…カラン、コロン。



下駄の音が歩く度に聞こえてくる。
けれどその音を一度も嫌だなんて思わない。
この音を聞くと暑さなど吹っ飛ぶからだ。
涼しく感じる。



でもその涼しさはここまで。
理由は目の前に広がる光景がそう語るからだ。



沢山の人。
沢山の恋人たち。
沢山の家族。



人で道路が溢れている。まるで洪水のよう。



先が見えないくらいだ。