沙紀の浴衣姿が特典として付いてくるのなら人混みだろうが、どこへでも行ってやるよ。
「行く!!絶対行くから!!浴衣着てきて!!」
興奮のあまり声が大きくなってしまう。
沙紀はそれに驚いたのか若干引いた感じで「うん」と返事をした。
8月27日。
この日は最高の思い出にしてやる。
…けど意気込みは良かったものの、今目の前にあるものが俺の思考をストップさせた。
富田があるものを広げて満面な笑みをこちらに向けてくる。
「…なんですか?これ」
普段、富田に敬語を使わない俺がこの時はぽろっと零れてしまった。
「夏祭り、行かれるんですよね?これをどうぞ。特別に作らせました」
俺の前に広がるもの。
それはグレー色の浴衣と、黒い帯だった。
これは、浴衣だ。
「ちょっと待てよ!もしかして俺が着ろって?これを!?」
浴衣を指差しながら、状況を把握しようと必死な俺。
富田は笑顔のまま深く頷いた。