だから俺はお前が迷っているとき、あの言葉を言ったんだよ…。
…この日の帰り。
俺は沙紀と肩を並べて一緒に帰っていた。
もちろん話題はあの二人のこと。
「…あたし土屋くんのことがよく分からない。何で百合と付き合ったのかな?」
下を向いて行き場のない愚痴を道路に溢す沙紀。俺の耳の中にその愚痴が入ってくる。
茜色の夕日。
空にはオレンジ色に変わった雲が幾つも存在していた。
「もしさ、優に彼女ができて、『何で付き合ったの?』なんて俺は聞けない。てか聞こうとしないかな。」
「え?何で?気になるじゃん。付き合った理由とか…」
俺はゆっくりと沙紀の方に顔を傾けて笑った。
沙紀に分かってもらおうとしたんだ。
「気になるけど…聞かない。だって優が選んだ人だから。この人と幸せになりたいって思って付き合ったわけだし、それを壊そうとしたくない。安里だって、小林だって同じことだと思うよ?」
優が選んだ道を横から口出しなど出来るわけない。
幸せを望んでいる友達だからこそだ。