もっと何か言うと思っていたのに、それだけか?と少しだけがっくりしてしまった。
顔色ひとつ変えない優。お前の心の中を覗いてみたいよ。
「安里が告ったんだって」
言葉を付け加える俺。
そして反応をまた見るのだ。
けれどこれもまた期待外れ。
「ふーん…俺には関係ないし」
小さく笑って、空を眺める優。
俺はその横顔をじっと見つめる。
透視出来たらいいのにと強く願った。
俺は優じゃない。
だから優が思っていることは分かるはずがない。けど分かりたい。
力になりたいから。
優、お前はこの時安里を恨んだか?
俺は安里の話を聞いていたから安里を恨むことは出来なかった。
だって、安里は『優を裏切れない』と言っていたから。
強がりは何も強くない。弱い自分を見せたくないから強く見せるのだ。
強がりはただの鎧。
優はそうだった。
強がりという鎧を纏った、弱虫だった。