ごくん。
生唾を飲む音。


どくん。
心臓が動いた音。



気持ちだけが焦っていく。
安里は誰が好きなの?
そういえば聞いたことがなかった。
安里の恋愛話。
てっきり彼女がいると思い込んでいたのだ。
だってサッカー部のマネージャーが安里を好きだと噂で聞いていたから。
あの話はただマネージャーが一方的に安里を好きなだけか。

じゃあ安里は誰が好きなのだろう?



「誰なわけ?ここまで言っといて、言わないはないからな?」



安里は俺から視線を反らして、ぼんやりどこかを見つめる。



そして口を開いた。


「俺が好きな人は…小林百合。優の元カノだよ…」



今…なんて?
安里の口からはっきりと聞こえた名称。
それは『小林百合』
そして優の『元カノ』と言った。


なぜか『元カノ』という言葉に腹が立つ俺。
安里は間違っていない。確かに小林は優の元カノだけど…。
けど…、けど…。



何て言ったらいいか分からない。



「そう…なんだ。なんか意外だな…」