いつも笑顔の安里から笑顔は無くなっていた。
今映る安里の姿は真剣そのもの。
だから俺は拒めなかった。
「あ、うん。時間なら大丈夫。珍しいな、安里が俺を誘うなんて」
慌てて荷物を片付ける俺。
安里の顔が次第に曇っていく。
この空のように。
「良かった。お礼に何か奢るからさ。」
こう言って安里は教室から出ていく。
そのあとを俺は黙ってついていく。
外は雨。
最近ずっと雨だ。
太陽を見ていない。
見たいのに顔を出してはくれなかった。
グラウンドには沢山の水溜まり。
濁った茶色の雨水。
それを見た俺は悲しくなった。
「安里、どこに行くわけ?つかお前部活出なくていいの?雨の日はいつも自主練してんじゃん」
「今日は特別。どうしても歩に聞いて欲しいことがあるから」
何?そんなにも深刻な話なの?
俺の気持ちまで空のように曇らせないでくれよ?