周りから人が徐々にいなくなっていく。
小林も自分のクラスに戻って行った。


俺と沙紀の間には会話はないけど、繋がるものはある。


手と手。
温もりと温もり。

それだけで十分だ。



「あ、優だ…」


掲示板の近くにいた優を発見した俺。
クラスを見に来たのだろう。


「優~」



俺は聞こえるくらいの声で優の名前を呼んだ。



「お!歩じゃん!久しぶり!」



手を上げて俺たちを歓迎する優。
そんな無邪気な彼の姿を見て嬉しくなる。


小林の言葉がちらつくけど、無理矢理消した。


「だなぁ。俺たち同じクラスだぜ!」



「おっ、まじで~」



「あと沙紀も!」



「やったじゃん!」



俺の言葉を聞いた優はどこかホッとした表情をする。
けどそれはすぐに曇ってしまった。
優は再び掲示板に視線を戻し何かを確認している。



もしかして…優。
お前は誰かの名前を探しているんじゃないのか?



その名前が小林であって欲しいと俺と沙紀は望んだ。