けど運命は動いていた。優に笑顔が戻ったんだ。
それはあいつと出逢ったからだろう。
「あっゆむー!おはよー!」
手を振りながら、俺に挨拶をしてくるのは沙紀だ。
けどどこかに違和感を感じる。
いつもと何かが違う気がする。
「…あれ?沙紀、髪の毛切った?」
そう、沙紀の髪の毛が少しだけ短くなっている。胸の下まであった長い髪の毛は、胸あたりまでになっていた。
「分かる?少しだけ切ったの」
毛先を触りながら、笑顔でこう言う沙紀。
「似合うよ、すごく。可愛い」
言ったあとに照れる俺。やめてよ、もう。
この街のように、俺の心までピンク色に染めないでよ。
「なに照れてんのよ?学校行こ!」
沙紀は俺の手を握り、歩いていく。
今年の春から俺たちは歩いて学校に行くことにした。
理由は、二人の時間を少しでも長くしたいから。
そう提案した沙紀は今の俺より照れていたけどね。