恋をするだけでこんなにも人は変わってしまうというのなら、俺は一生したくないと思う。


恋をするだけ無駄な気がするのは俺だけだろうか?



「歩?どうかした?」



急に黙ってしまった俺を変に思った隼人は、俺の顔の前でひらひらと手を振る。



「あ…別になんにも。
何組になったかなーって思ってさ。クラス見に行こうぜ?」



嘘くさい発言。
それに隼人はなにも疑いもなく納得をするだろう。


「びっくりしたし!行こ、行こ!」



ほらな。
もうなんとなくわかってきたよ。
人間の行動とか、頭の中とか。


けど俺は恋だけは分からないままだった。



クラス発表は、事務所でもらえるプリントで発表される。
掲示板など見なくてもいいように、先生たちが配慮をしたのだろう。

結局、事務所も混雑するのだから一緒だけれど。


「人多いな…」


隣でボソッと隼人が呟く。
そう呟くのも無理はない。
事務所周辺には沢山の人たちで溢れていたから。


「行くしかないだろ…」


俺は溜め息を漏らして、人混みを掻き分けていく。

そしてようやく辿り着いた事務所。
《新二年生》と書かれた箱から一枚プリントを取る。
それを握ったまま、再び人混みを掻き分けて行った。