「けど…私、鈴木くんの連絡先知らないよ?」



小林は潤んだ瞳を俺に向けて、困った表情を見せた。
そうだ、忘れていた。
小林は優の連絡先を知らないんだった。


俺は頭を抱えて悩み出す。



「そう…だよな…
俺が教えてやりたいけど、そうすると優は疑問に思うよなぁ…」



どうしてせっかく見つかった答えには落とし穴あるのだろう。
そんなの、無くていいのに。



オレンジ色に染まる教室に、暗い色が加わってくる。
そろそろ夜と交代の時間か。
早くしなくちゃいけない。
優の気持ちが変わらないうちに。



その時、あることが閃いた。



「そうだ!その木田ってやつに聞けよ!優の連絡先。それでいいじゃん!」


笑顔でこう提案する俺。その提案に沙紀はすぐに賛成をした。


「それいいね!そしたら怪しまれないし!」



俺と沙紀の笑顔を見た小林は、小さく笑って『うん』と頷いていた。



けれど、俺はさらに落とし穴があるなんて気付いていなかったんだ。


バカだよ、俺は。



この提案が、また優と小林を苦しめることになるなんて思ってもいなかったんだ。