頼むから言ってくれ。
じゃないと俺は何も出来ないだろ?
すると小林は涙を手で拭いて、真っ直ぐ俺と沙紀を見上げた。
その瞳の真っ直ぐさに、一瞬金縛りにあったようになった。
机に広がるプリント。
夕日の反射によって、何も書かれていないただの紙切れに見えた。
きっと優と小林の恋もこのように真っ白からのスタートだったのだろう。
二人で真っ白から徐々に色をつけていこうとしたんだよな。
分かるよ、俺もそうだから。
「…どうして…こんなに苦しいのかな…?」
小林は涙を一粒溢しながら、俺たちに言ってきた。
正直、答えは見つからなかった。
答えてあげたかったのだけど、見つからなくて。
「…俺と沙紀は逃げないから、小林を苦しめていることを全部言えよ」
夕日が、沈んでいく。
夕日はまた明日も同じ時刻にやってくるけれど、そんな未来は俺たちには保証されていない。
明日、いなくなるかもしれないし。
そんな怖い世界で俺たちは恋をしているのだ。