何て言ったらいいのか分からなくて。


俺が彼女の名前を呼ぼうとしたとき、後ろにいた沙紀が俺より先に彼女の名前を呼んだ。



「百合…」



そう言って、慌てながら教室にいた小林に近づいていく。
その声に反応した小林は、俺の方にゆっくりと顔を向ける。


反射する水滴。
その水滴は小林の頬にあった。
目から流れているのだ。
それは、涙。



小林の涙を見た瞬間、息ができなくなった。


苦しい、苦しい。

助けて、助けて。



「小林…どうしたんだよ?」



心配になった俺は、沙紀のあとを追って、小林のもとへと急ぐ。



「沙紀…斉藤くん…私…私…」



大粒の涙を溢しながら、必死に何かを訴えようとする小林。


そんな小林の頭を撫でながら、励まそうとする沙紀。
俺は何が出来るの?


突然、頭の中を横切った言葉だった。



「…小林、お前さ、俺たちに何か隠してることあるんじゃないの?」



泣き続けている小林を見下ろして、俺はこう言った。



言ってよ、お願いだから。