胸が締め付けられる。
この夕日が俺を更に苦しくさせる。
今はこの夕日を見ていられない。
明るすぎて直視できない。
俺の心の中がきっと暗いからだ。



「沙紀、教室行こうぜ。きっとアイツ、一人で泣いているはずだから…」



沙紀の方に振り向き、小さく微笑みを溢す。
沙紀は首を傾げて、俺を見つめてきた。



俺は「いいから行こ」と言って、屋上から出て行く。



アイツも自分を苦しめているはずだから、一人にしたら不安だよ。
俺にとってアイツも大事な友達だから。


沙紀は静かに俺のあとをついてきた。
教室に着けば理由が分かるはず。


不気味なくらい静かな廊下。
俺たちが歩いているのに、音は聞こえて来なかった。
呼吸の音さえ。

それくらい心が病んでいるという証拠。



見えてくる1年2組。
教室からはオレンジ色の光が溢れていた。



俺はごくんと唾を飲んで、教室を覗く。


教室の中には彼女がいた。
一人でぽつんと自分と戦っている彼女。


俺はしばらく彼女に声をかけることが出来なかった。