沙紀なら賛成をしてくれると思っていたのに。


沙紀は表情を曇らせて、温かくなったアスファルトの上に座り込んだ。
俺はそんな沙紀を見て、疑問に思った。
なに?沙紀も何か俺に隠しているの?



「…百合がね、何か隠しているみたいなの。教室を飛び出した理由を聞いたけど、流されたっていうか…隠しているみたいなのよ」



こう言って、はぁ…と溜め息を漏らす沙紀。
俺は何て言ったらいいか分からなくなり、頭を掻いた。


優と小林の間に一体何があったんだ?



「そう…なんだ」


これしか言い様がない。言葉を探しても見つからなくて。
頭の中に浮遊する言葉は沢山あるのだけど、上手く伝わりそうになかった。
俺はフェンス越しからグラウンドを見つめる。


その時、ある人の存在に気がついた。
その人は何か辛いモノを背中に背負って、下を向いて足早に歩いていた。


そんな光景が信じられなくて。


俺はただその人の姿を高い場所から見下ろすだけ。



二人きりだと思っていた教室は、もう一人ぼっちの教室に変わっていたのだった。




優、お前は愛する人を一人ぼっちにしていいのかよ。