「ちょっと、沙紀!」



友達と仲良くお喋りをしていた沙紀を呼び出して、俺は沙紀の腕を引っ張り、廊下を歩いていく。


「ちょっと…なによ!」


状況が分からない沙紀は俺の背中に言葉をぶつける。
俺は無言のままある場所へと向かっていた。
ここなら誰も来ないでしょ?


古びたドアを開けると、そこには茜空が広がっていた。
そう、俺と沙紀が辿り着いた場所は屋上。



「歩、なによ?こんなとこに連れてきて」



沙紀は俺が握っていた腕を擦りながら眉間に皺を寄せてこう言った。



「今、教室には優と小林しかいない!ということは、二人は仲直りして、仲を深めて…」



言葉の続きは言わなくても分かるだろ?
沙紀なら分かってくれるよね?
俺の目の輝きを見てよ。



「…それって上手くいくとは限らないじゃない」



沙紀から返ってきた言葉は思わず疑ってしまいたくなりそうな言葉だった。
沙紀なら分かってくれると思ったのに。



「上手くいくに決まってんだろ?誰もいない教室に二人きりだぜ?」



ちょっと、ちょっと。
期待を裏切らないでよ。