本当は叶えて欲しいけど、恋愛はそんな簡単なことじゃないから。
見守っていてよ、ねぇ。
数分後、優が教室に戻ってきた。
その表情は曇っていた。出ていくときより、酷く。
「優ー。小林見つかった?」
優の顔を見上げて、尻尾を振ってエサを待つ犬のように、笑顔で優の返事を待つ俺。
すると優は顔を上げて、俺たちにこう言ったのだ。
「…俺…」
「あ?」
「俺、あの子にメールするよ」
その言葉が信じられなかった。
まさか優がそんなことを言うとは。
さっきは今と真逆なことを言っていたのに、どうして変わったのだ?
なにかあったのか?
「はっ!?小林はどうするんだよ!」
立ち上がり、優を真剣な目で見る俺。
今なら俺はお前を殴れそうだ。
どうして?何で?
お前の気持ちはどこに行ったんだよ?
「小林は…諦めた」
また、信じられない。
優が『諦めた』という言葉を使うなんて。
意味が分からないよ。
優は小林が好きなんだろ?
メールだってしてるんじゃないのか?
距離は縮まっただろ?
なのに、何で?
何でだよ…、優。
『諦めた』なんて二度と使うな。
諦めたら、もうそこで恋愛は終わりなんだ。
諦めたなんて使うなよ。