もう何て言ったらいいのか分からなかった。
優に同情をしたら優が余計辛くなるだけだし、かといって、小林を追いかけて慰めるのは俺の役目ではない。
「俺…のせい?」
小さな声で言葉を漏らした優。
その表情からは、罪悪感を感じさせるような表情だった。
「優のせいか?わからん…」
これだけしか言えない俺は無力すぎる。
けど小さな期待を抱いていたのだ。
優が小林のあとを追いかけて行って、二人の気持ちが繋がればなって密かに思っていた。
無理な話だろうけど。
「俺、ちょっと行ってくる」
こう言って、立ち上がる優。
その姿を見て男らしいと思った。
凛とした優。
俺の些細な願いが叶った瞬間だった。
「おっおうー」
だからこれしか言えなかったんだ。
嬉しくて。
小林を追いかける優の後ろ姿にまた願いをかける。
『幸せになりますように』と。
「鈴木くんの背中に『百合が好きです』って書いてあるように思えるね」
嬉しそうに微笑みながら言う沙紀。
背中に書いてあっても意味がないよ。
相手は真正面から自分を見るのだから、『好きです』という言葉を前に持って来なくちゃ、気づいてくれないよ。