沙紀が言おうとした瞬間、沙紀の体がよろめいた。
俺はいきなりどうしたのかと思い、思わず沙紀の腕を掴んでいた。
「どうしたの?」
ある人の言葉でこの空間が一瞬にして凍りつく。その人は、小林だった。沙紀がよろめいたせいは、小林が沙紀を抱き締めたからだった。
俺は思考が停止してしまい、しばらく何も考えられなかった。
小林の大きな瞳が、俺たちを映す。
「えっ、別に何でもないよ」
沙紀は慌てて机の上に置いてあったピンク色の便箋を隠そうとしたが、小林がそれに気づき、沙紀から便箋を奪った。
優は俺と同じで思考停止中。
「この手紙、なぁに?」
小林から零れ落ちる言葉が怖く感じる。
何を言われるのか、そしてその質問を上手く誤魔化せる言葉が見つかるのか。
そればかり考えていた。
小林はその手紙を開いて見る。
その瞬間、小林から笑顔は消えた。
「なになにー?メールください。相沢瞳…。どうしたのこれ…」